音便(続)
- 「音便」とは、要するに、「形態素」の膠着においてモーラ数を維持しながらシラブル境界を消してシラブル数を一個減らす(2 シラブル 2 モーラを1 シラブル2 モーラに変換する)一体化の現象にほかならない。子音動詞「音便」での一体化は明示的記述の一種によって次のように段階的に述べられる。
/-ite, -ita/ → /-ide, -ida/ / /n, m, b, g/ @ ____
2) (語幹と助詞の)一体化
a) /n, m, b/ @ /i/ → /N/
b) /g, k/ @ /i/ → /-G/
c) [-主体]@ /i/ → /Q/
- 子音動詞語幹の末尾に来る子音音素は事実上 /n m b g k f t r s/ の九つであるが、これらの末尾子音につき、それぞれを代表する動詞語幹と助詞 /-ita/(「過去」)との結合による音便形の派生段階を上記の規則に照らして示すと次のとおりとなる。
sin@-ita 基底形
sin@-ida (段階 1 の出力)
siNda 表層形(段階 2a の出力)
飲む・飲んだ
nom@-ita 基底形
nom@-ida(段階 1 の出力)
noNda 表層形(段階 2a の出力)
転ぶ・転んだ
korob@-ita 基底形
korob@-ida(段階 1 の出力)
koroNda 表層形(段階 2a の出力)
泳ぐ・泳いだ
oyog@-ita 基底形
oyog@-ida (段階 1 の出力)
oyo-Gda 表層形(段階 2b の出力)
書く・書いた
kak@-ita 基底形
ka-Gta 表層形(段階 2b の出力)
笑ふ・笑った
waraf@-ita 基底形
waraQta 表層形(段階 2c の出力)
勝つ・勝った
kat@-ita 基底形
kaQta 表層形(段階 2c の出力)
太る・太った
futor@-ita 基底形
futoQta 表層形(段階 2c の出力)
話す・話した(音便なし)
hanas#-ita 基底形
hanasita 表層形 (境界消去のみ)
- ところで 『笑ふ』『買ふ』などを『笑う』『買う』などとすると語幹 /waraf/ /kaf/ は /waraw/ /kaw/ となるが、/w/ は半母音だから、子音を拡大解釈すれば子音の仲間でもある。つまり『笑う』『買う』などは現代仮名遣いのままでも子音動詞の仲間入りは実は無理なくできる。(『笑ふ』『買ふ』と考えた方が分かり易いだけの話)
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