ハ行(先頭分節音)の阻害性(2005/12/01)
訓令式ローマ字で /h/ と表示されるハ行の先頭分節音は、カ行やサ行などの先頭分節音と違って 、阻害性をめぐる素性値が(次の「音形規則」に示したように)ヒ、フではプラスだが、ハ、ヘ、ホではマイナスになる。
/h/ --> [+阻害性] /___ [i, u]
その他は /h/ --> [-阻害性]
つまり ([+阻害性] の分節音の総称が C だとすれば)ハ行を無差別に(カ、サ、タ、ナ、マ、ラと同類の) CV と見做すのは、実は不合理なのである(阻害とは息が口腔を通過する時に出会う妨害動作と定義した場合)。この「音形規則」は [-阻害性] を /h/の本質としていることになるが、次のような「音形規則」によって、逆に [+阻害性] を本質とすることもできる。
/h/ --> [-阻害性]/___[-high]
その他は /h/ --> [+阻害性]
Q
二通りの「音形規則」のどちらがよいと思うか、理由を述べて答えなさい。
A
/h/ を(条件付きでも)C と見做せば、 五十音を V, CV, GV の三パターンだけに要約(= 一般化 generalize, generalization)することができる。 (C)(G)V (括弧内は随意的要素)としてまとめれば拗音の CGV を含む更なる一般化となる。 これに対し、/h/ は C ではないとすれば、このような一般化はできない。故に /h/ は本質的に [+阻害性] の素性値を持つとするのが矢張りよいであろう。(一般化は単純なほど優れているとすれば)