Monday, November 14, 2005

ハ行(先頭分節音)の阻害性(2005/12/01)

 訓令式ローマ字で /h/ と表示される行の先頭分節音は、カ行やサ行などの先頭分節音と違って 、阻害性をめぐる素性値が(次の「音形規則」に示したように)ではプラスだが、ではマイナスになる。


/h/ --> [+阻害性] /___ [i, u]


その他は /h/ --> [-阻害性]


 つまり ([+阻害性] の分節音の総称が C だとすれば)行を無差別に(カ、サ、タ、ナ、マ、ラと同類の) CV と見做すのは、実は不合理なのである(阻害とは息が口腔を通過する時に出会う妨害動作と定義した場合)。この「音形規則」は [-阻害性] を /h/の本質としていることになるが、次のような「音形規則」によって、逆に [+阻害性] を本質とすることもできる。


/h/ --> [-阻害性]/___[-high]


その他は /h/ --> [+阻害性]


Q


 二通りの「音形規則」のどちらがよいと思うか、理由を述べて答えなさい。


A


 /h/ を(条件付きでも)C と見做せば、 五十音を V, CV, GV の三パターンだけに要約(= 一般化 generalize, generalization)することができる。 (C)(G)V (括弧内は随意的要素)としてまとめれば拗音の CGV を含む更なる一般化となる。 これに対し、/h/ は C ではないとすれば、このような一般化はできない。故に /h/ は本質的に [+阻害性] の素性値を持つとするのが矢張りよいであろう。(一般化は単純なほど優れているとすれば)

Friday, November 11, 2005

モーラとシラブル (2005/11/24)

  • 「北海道」には [自立拍+付属拍] の構成を持つ三つの連鎖が含まれている。
  • 自立可能の分節音一個を中核( nucleus )とするこのような(一個または一個以上の分節音が作る)連鎖は、言語音声が「聞こえる」ものとなるために不可欠な基本要素で、それがすなわちシラブル (syllable) である。つまり「北海道」は 三シラブルの単語である。
  • 多くの言語(特に漢語系の言語 など)では、シラブルの数が語句の長さの直接の尺度である。しかし日本語では、語句の長さの尺度となるのはシラブルの傘下にあるモーラの数で、(傘下のモーラ数によって長短の決まる)シラブルではない。 (例えば「久留米」も三シラブルだが長さは「北海道」の半分)

Q

「北海道」を 「ホッカイドー CVQCV-GCVR (3 シラブル = 6 モーラ)」と分析するのと同じ要領で政令指定都市全部(2005 年現在)の名称を分析しなさい。

A

札幌 サッポロ CVQCVCV (3 シラブル=4 モーラ)

仙台 センダイ CVNCV-G (2 シラブル=4 モーラ)

さいたま サイタマ CV-GCVCV (3 シラブル=4 モーラ)

千葉 チバ CVCV (2 シラブル=2 モーラ)

横浜 ヨコハマ GVCVCVCV (4 シラブル=4 モーラ)

川崎 カワサキ CVGVCVCV (4 シラブル=4 モーラ)

静岡 シズオカ CVCVVCV (4 シラブル=4 モーラ)

名古屋 ナゴヤ CVCVGV (3 シラブル=3 モーラ)

京都 キョート CGVRCV (2 シラブル=3 モーラ)

大阪 オーサカ VRCVCV (3 シラブル=4 モーラ)

神戸 コーベ CVRCV (2 シラブル=3 モーラ)

広島 ヒロシマ CVCVCVCV (4 シラブル=4 モーラ)

北九州 キタキューシュー CVCVCGVRCGVR (4 シラブル=6 モーラ)

福岡 フクオカ CVCVVCV (4 シラブル=4 モーラ)

Sunday, November 06, 2005

自立拍と付属拍(2005/11/17)


  • 主体性がプラスの分節音は自立できる(とされる)分節音で、主体性がマイナスなのは自立できない(とされる)もの、つまり自立できる(とされる)分節音に付属(依存)する分節音である。

  • モーラ音素 Q と N も(例外的に自立するNを除けば)、C と G のように V に依存するので、Q や N によるモーラ(拍)は一般に付属拍(または特殊拍特殊モーラ)と呼ばれ、V による自立拍 (または自立モーラ)と区別される。但し付属拍は Q と N によるものばかりではない。

  • 例えば「北海道」(ホッカイドー)が持つ三個の自立拍()には、依存する付属拍が一個ずつあり、うち一個は に依存する Q だが、に依存するのは Q でも N でもなく、それぞれ二重母音の後半部と長母音の後半部である。つまり(前者を -G、後者を R と記号化すると)ホッ カイ ドーは (一応 )CVQCV-GCVR と分析される。

Q


都道府県名で付属拍を含む(とされ得る)ものを漏れなく列挙し、それぞれについて、上記の「北海道」についての分析と同様の分析(片仮名表記を含む)を行いなさい。


A


北海道(ホ)CVQCV-GCVR


群馬(グマ)CVNCV


埼玉(サタマ)CV-GCVCV


東京(トキョ)CVRCGVR


新潟(ニガタ)CVRCVCV


愛知(アチ)V-GCV


京都(キョト)CGVRCV


大阪(オサカ)VRCVCV


兵庫(ヒョゴ)CGVRCV


鳥取(トトリ)CVQCVCV


高知(コチ)CVRCV


大分(オイタ)VRVCV

Friday, November 04, 2005

促音と撥音の異音(2005/11/10)


  • 主体性はマイナスだが音拍性はプラス(そして Q は有声性が常にマイナスで N は鼻音性が常にプラス)、ということが促音 (Q) と撥音 (N) の不動の本質である。

  • つまりその他の素性値はすべて流動的で、そのために多くの異音も生じ、特に阻害性およびそれに伴う前方性や舌頂性については、完全に後続する C の「色に染まる」と言ってよい。(後続するのが C でない 場合は、検証が比較的困難ゆえ触れないことにする)

Q


素性値の組み合わせが異なる Q の例三個と N の例三個を含む計六個の語句を選び、それぞれの Q と N の素性値を、 主体性、音拍性、阻害性、前方性、舌頂性、有声性、鼻音性の順に示しなさい。(一つの語句が二個またはそれ以上の Q や N を含むものは避けること)


A


カップ(カプ) [- + + + - - -]


一致(イチ) [- + + + + - -]


作家(サカ) [- + + - - - -]



酸味(サ [- + + + - + +]


今日(コニチ) [- + + + + + +]


山岳(サガク) [- + + - - + +]