Wednesday, December 19, 2012

言語記述の妥当性

  • 学問とは知識の整理である。整理はもちろん「妥当性」がなければ整理とは言えない。
  • 整理の妥当性は、言語に関する限りでは、目標として三段階の妥当性がある、と Noam Chomsky は指摘した。観察的妥当性 (observational adequacy) 、記述的妥当性 (descriptive adequacy) 、説明的妥当性 (explanatory adequacy) の三段階である。
  • 整理(記述)が言語のデータを正しく伝えることができさえすれば、それで観察的妥当性の要求は満たされる。つまり観察的妥当性は正確性の有無(およびその判断の可否)の如き低次元の問題以外に妥当性の優劣を論じる余地はない。より高次元の優劣は次の記述的妥当性の段階と、更にその上の説明的妥当性の段階で、始めて論じることが可能となる。
  • 記述的妥当性とは整理(記述)が母語話者の直覚 (intuition) を手際よく反映したものである場合にのみ達成され、説明的妥当性とは、そのような整理(記述)が同時に他言語との比較において意味を持ちうる(説明力がある)場合にのみ達成される。
  • ということは、整理(記述)の記述的妥当性についての優劣は、その整理(記述)の対象言語における母語話者語感に対する反映度で評価され、説明的妥当性についての優劣は、その整理(記述)の異言語を跨ぐ普遍性に対する反映度で評価される、ということになる。