Thursday, April 28, 2011

音便(続の続)

  • 日本語子音動詞の音便は、語幹が /n,m,b/ に終わる場合が「撥音便」、/g,k/ に終わる場合が「イ音便」、そして /f,t,r/ (つまり音便境界を持ち得るその他の子音)に終わる場合が「促音便」という一般化では、実は動詞「行く」の正しい音便形(「いった」「いって」)を派生できない。なぜなら「行く」は普通の /k/ に終わる動詞と異なり、「イ音便」ではなく「促音便」だからである。
  • それ故「イ音便」の規則に次のような例外を先行させる修正が必要である(#は形態素一般境界、@は音便境界)。
「イ音便」

/k/@/i/ ---> /Q/ / #/i/ ____

/g, k/@/i/ ---> /-G/
  • いわゆる「促音便」は、一般規則  /f,t,r/@/i/ ---> /Q/  によるもののほかに「イ音便」の例外としてのものも有るわけである。注意すべきことは、例外的「促音便」の /k/@/i/ ---> /Q/  の変化にも /k/ と /Q/ の共通性(共に [ー有声])が働いていることである。つまりここでも音便の「出力」は「入力」との共通性を維持している。(「イ音便」に従ってもこのような「同質維持」の要求は満たされる。 /k/ と /-G/ は共に [+high] だから。しかしそれが敬遠されて /k/ と /Q/ の共通性を強調する「促音便」が選ばれたのは「同質維持」と同時に目立ちすぎる /k/ と /-G/の連続を避ける「同質不連続」をも同時に確保できるからであろう。なお「行く」を「ゆく」と発音しても「促音便」になるから、上記の条件 #/i/ ___  は #/i,yu/___  とするべきかも)